KYOSUKE-YAMATABI〜山旅

日本の山を旅するブログ〜登山、温泉、車中泊

北アルプス登山記 日本最大の峡谷、黒部峡谷下ノ廊下を歩く山旅(1)


日本屈指の大峡谷、日本最後の秘境・・・などなど黒部峡谷を形容する言葉は多くあると思います。北アルプスの奥深く、深く大地に刻まれた大峡谷は、多くの登山者の憧れです。1年の内、平年では歩けるのは9月下旬から10月中までの1ヶ月あまり。雪解けの具合によってはほとんど歩ける期間がないという年もある、まさに期間限定、登山を計画しても運が良くないと歩けないという事態も普通にあります。加えて歩行距離は全行程で30km、そのほとんどが断崖絶壁を歩くというもので豊富な登山経験が必要な難ルートとなっています。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119184851j:plain

黒部峡谷はただ奥深く、人里離れた場所というものではなく、逆に極めて人間の痕跡が色濃く残された 場所であることが、他の秘境と呼ばれる場所と大きく異なっているところではないでしょうか。黒部の歴史は電源開発の歴史そのものです。北アルプスの豊富な残雪からなる水源と深い峡谷。水力発電にはもってこいの好立地です。戦前よりなんとかこの地に発電のためのダムを作れないかと多くの人がこの峡谷に分け入ってきました。それはまさに執念というべきもので、アルペンルートで有名な黒部ダムを作り上げることになりました。人間と自然との戦い❗️それを実感できる場所なのです。今回歩いた下ノ廊下(旧日電歩道)も電源開発の調査のために切り開かれた道そのもの。なんかこの記事を書いている今も胸が熱くなる自分がいました❗️

 

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120134514j:plain

今回の登山コースは次の通り

1日目:黒部ダムー下ノ廊下(旧日電歩道)白竜峡、十字峡、仙人ダムー阿曽原温泉小屋(

泊)

2日目:阿曽原温泉小屋ー水平歩道ー欅平駅

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119191149j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119191223j:plain

山旅の始まりは立山黒部アルペンルート富山県側の玄関口、立山駅。朝一番の便で登山口になる黒部ダムに向かいます。今回、友人2名と共に登山します。登山口と下山口に車を置いて、登山後に車を回収する計画です。交通機関を利用しても可能ですが、無駄な時間がかかるためマイカーを使用します。1泊2日のちょっと強行日程です。なかなか連休を合わせるのが難しいので致し方ありません。

本年は残雪が少ないということで、例年に比べて早い時期から歩くことができるようになりました。10月中旬ということで、アルペンルートの室堂駅では秋を通り越して初冬の景色です。黒部ダム周辺は標高が低く、これから紅葉の見頃🍁という感じでしょうか。

黒部ダム到着は富山側からアプローチした場合、最大限に頑張ってAM9:00頃が限界。ここから本日の宿泊地、阿曽原温泉小屋♨️まで9時間以上かかる道のり。ゆっくりしている時間はありません。急いで登山の準備をしてスタートです。

無機質なダム施設を通って、まずダムサイトの底を目指してひたすら急な坂を下っていきます。そして黒部川の本流を渡す橋を渡ると、上流には圧巻の黒部ダムの聳り立つダム堰堤が見えます。高さ186m、観光放水の水しぶきが豪快そのものです。こんなものよくこんな場所に作ったな〜。人間の力は凄い❗️その一言の景色です。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119193300j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119193330j:plain

堰堤下から内蔵助谷出合までは樹林帯や川岸を歩きます。紅葉が始まった山肌と青空が綺麗で、登山意欲がどんどん湧いてきます。幸先がいいね👍

内蔵助谷出合には「これより先、旧日電歩道、危険、遭難事故多発」みたいなことが書かれた看板があります。いよいよここから下ノ廊下のスタートです。これより先、危険箇所が多数あり、気を抜くことができません。「黒部に怪我なし」という言葉があるようですが、その意味は、怪我では済まない❗️事故即、死❗️を意味しています。なんか凄いところに足を踏み入れようとしている。でもそれ以上にワクワク感がMAX状態です。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119194356j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210119194446j:plain

小休止の後、ヘルメットを装着して、いざ出発です!歩き始めてしばらくすると、両側の岸壁が切り立ってきて、谷は深くなってきます。前方には左側の岸壁に水平に岩を削って付けられた道が続いています。延々と続いている・・・まさにそんな感じ。道幅は50㎝〜1m、足を踏み外せば谷底に一直線に落ちてしまいます。これが下ノ廊下なのですね😭「黒部に怪我なし」良く解ります。ひとつ安心なのは道沿いに張られた細い針金。手すり替わりには心もとないですが、バランスを取るためにかなり重要です。これがないと・・と想像すると、怖くなってしまいますね😭

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120121041j:plain

緊張しながら、時折足元が崩れた場所を通り過ぎていくと、目に前に頭上に続く梯子🪜が現れます。これが、1つ目の難所、大ヘツリの高巻き箇所か?梯子が丸太でできており、滑りやすく、より一層恐怖感が増します。高さは30mはあるか❓垂直に梯子を登っていきます。これは怖い😭梯子の高さプラス川底までの深さ・・100mは軽く超えてるよ〜❗️これは下を見てはダメだ🙅‍♂️足元、手元に集中して、梯子の登り、下りをします。この時点で下ノ廊下の怖さを実感です。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120134305j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120122249j:plain

大ヘツリの高巻きを過ぎると一気に周りの景色が荒々しいしくなってきます。黒部別山谷出合に到着すると両側の岸壁がV字型に切り立って、谷が狭くなってきました。このあたり、毎年残雪が谷に残っていることが多いようですが、今年は残っていません。ここの残雪の状態が、その年の通行期間に影響するようです。それくらいこのコースの難所ということのようです。いよいよ下ノ廊下の核心部に近づいてきました。このコースで最も谷が狭く、急流となり、登山ルートも険しくなる場所は、黒部別山谷出合から白竜峡間。この区間が核心部と言っていいでしょう。黒部別山谷出合には休憩できるスペースがあります。この先、しばらく休憩できるスペースはありません。水分補給をして、準備を整えて出発します。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120135512j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120135541j:plain

黒部別山谷から白竜峡間は本当に「こんな場所、日本にあるんだ❓」と思いたくなる迫力の絶景の連続でした。谷の幅が信じられないくらい狭くなり、眼下には白く泡立ち流れる急流、左側の細い針金に手を添えながら夢中で歩きました。お互い出る言葉は「凄い❗️」のみです。素晴らしい体験をしている😆写真を必死に撮りながら黒部の大自然を体感します。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120140317j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120140354j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120140415j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120140507j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120140535j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120140615j:plain

 

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120141008j:plain

白竜峡を過ぎると谷全体の景色が落ち着いてきます。登山ルートも樹林帯に入ったりして、核心部の荒々しさとは変わって、単調なものとなってきます。このあたり、変化がない道をひたすら歩くことになり、疲れを感じる頃かと思います。真っ直ぐ続くV字の谷を黙々と辿ると、景勝地、十字峡に到着します。黒部川の本流に十字の形に谷が合流しています。不思議な景色です。谷が十字に合流することって実は珍しいことなんです。登山をする人はわかると思うのですが、谷は互い違いに順番に合流するのが普通(理由は良くわからない)で、こんなに上手く同じ場所で合流する景色は見たことがありません。合流する谷は、劔沢と棒小屋沢。剱沢は剱岳から流れ出る沢で有名ですよね。上流には剣沢小屋など剱岳のベース基地があります。

剱岳また登りたいな〜😁

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120142359j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120142419j:plain

十字峡を過ぎると1日目も終盤となります。作廊谷付近の絶壁の道、半月峡、S字峡と見所を通過していきます。次々と現れる迫力のある景色に「最後の秘境」そんな言葉が頭に浮かびました。出発が遅かった影響もありますが、日暮れが近づいてきています。さあ、先を急ぎましょう。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120165910j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120165933j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120170015j:plain

絶壁に付けられた道をどんどん歩いていきます。不思議と高さに慣れてきたのか、初めの方で感じた恐怖心はほぼなくなっています。慣れって凄いですよね。そして対岸に突然人工物が・・岸壁にトンネルのような形の人工物に「黒四発電所」と書かれています。おっ、これがあの有名な黒部第四発電所か❓発電所自体は山の中にあるそうです。それも凄いことだよね。黒部ダムの水をここまで引いてきて発電しています。この発電所の発電出力はおよそ33万キロワット。この出力、多いのか❓現代の原子力発電所1基の出力にも満たない能力です。多くの人達が途方もない苦労を重ねて作った発電所ですが、そんなものなのか・・と色々考えさせられますよね。原発や火力発電の方が遥かに効率がいいという現実。でも建設当時はこの発電所が関西の電力不足を大いに補ったと言われています。

頭上から水を浴びるというアトラクション的ポイントなどを通りながら、大きな吊り橋を渡る場所に到着します。東谷吊橋。この橋を渡ると下ノ廊下(旧日電歩道)はゴールを迎えます。長かったというか、歩くたびに次々と現れる絶景に驚くばかりの時間でした。終わってしまった・・満足感とともにどこか寂しさも感じてしまいます。そして心の中に「またいつかこの道を歩きたい」という熱い気持ちが込み上げてきました。絶対再訪します❗️仙人ダムの無機質なダム施設を通りすぎる頃には日もすっかり落ちて、雨☂️も降り出し、あとは本日の宿泊地、阿曽原小屋を目指します。暗闇と雨で写真は撮れませんでした。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120171652j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120171815j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120173126j:plain

PM 6:00 ヘッドライトを点けて暗闇の道を歩き、ようやく今日の宿、阿曽原温泉小屋に到着。歩行時間は9時間以上。疲れがどっと出ましたが、友人と握手🤝無事、下ノ廊下を歩ききることができました。

到着が遅くなったこともあり、急いで夕食の準備。楽しみの温泉♨️は後ほど。自炊ということで、メニューはカレーライス🍛グツグツという音とともに美味しそうなカレーの匂いがします。お腹減った😆ご飯の前にお決まりのビール🍺で乾杯🍻うう、、美味すぎる!充実の山行の後のビール🍺の美味いこと・・・最高でした。夕食後、急いで温泉に入りました。漆黒の暗闇の中、熱々のお湯に浸かる・・癒しとはこのことでしょう❗️いい湯でしたが、暗闇であり、写真を撮ることができませんでした😭次回、もっと早く到着してこの秘湯をもっと満喫したいです。

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120174109j:plain

f:id:KYOSUKE-YAMATABI:20210120174124j:plain

黒部峡谷の夜は更けていきました。明日は早起きをして、この山旅のゴール、欅平を目指します。

その2に続く